争奪

座椅子に座りテレビを見ていると、『遊んで〜』と言いながら娘が近寄ってきて、僕に馬乗りになった。その瞬間、視界の端で息子の目が光るのを感じた。息子は即座にいじっていたブロックを放り出すと、僕と娘の方へ『○○クンも〜っ!!』と叫びながらダッシュし、そのままフライングボディアタックを浴びせた。その後も僕の体力が尽きるまで延々と続く、本人そっちのけのマウントポジション争奪戦。

本人が参加できないマウントポジション争いに、帰宅後もヘトヘトな今日この頃。日々パワーアップしていく息子のフライングボディアタックに、いつまで耐えられるのだろうか。

恐怖

出張中のある日、上司から呼び出しがあった。定時前に上がって出張先の最寄り駅まで行くので、2人で話したいとのことだった。何の話かと恐怖を感じた僕は、電話があった昼過ぎから、その話の内容が気になってまるで仕事に手がつかなかった。

夕方、再度上司から連絡が入り、結局その日は会えずじまいだった。話の内容が気になったので、内容のさわりだけ聞いてみたところ、特に気にする必要もない他愛のない話だった。

そのような話題なら、電話では話せない内容だとか、同じ場所の他メンバーに僕に会うことは告げてこないだとか、話すること自体を他の人に話すなとか言わないでほしい今日この頃。クビとか転勤とか駄目出しとか考えて、精神的に非常に疲労した時間を返してほしい。

感謝

先日、妻の誕生日をまたいで2週間程度の出張が入ってしまった。誕生日が土曜日だったため、きっと休日を見込んでいたと思い、当日居ないことのお詫びの意味も込めて、何とか言葉を絞り出しつつ『おめでとう』&『感謝』メールを出してみた。

『こういうのくれるんだったら、いつ出張してもいいよ』

どうやら喜ばれたようだが、居なくても平気みたいな意味合いにもとれてしまって何となく複雑な気持ちになった。

転落

『あのなー、今日なー、芝生のところでエンピツしてきたんやでー』

阪神競馬場内の公園へ親子遠足に行った娘は帰ってくるなり、休暇を取って息子と留守番をしていた僕にこう言った。その後ろから家に入ってきた妻は、『芝生の坂みたいになってるところで横になりながら何回も転がってたよ』と半ば呆れながら説明し、あれのどこが楽しいのかと、しきりに首を傾げていた。

芝生とエンピツというキーワードだけで内容を瞬時に把握した僕には、まだ多少の少年の心が残っていると思った今日この頃。あの楽しさは妻にはどうにも理解しがたいようだ。

射出

先日Wiiポイントマネーで試しに購入してみたスーパーマリオをやっていた娘が、イライラした様子で聞いてきた。

『ねーっ!あのタンみたいの、どうやって出すのっ!』

あんなファンタジーな世界にそんなものがと画面を見ると、そこにはただただ飛び跳ね続けるだけのファイアマリオが疾走していた。どうやらファイアボールを出したいようだったが、それにしても痰とは。。。ある意味、火の玉よりも強力な武器かもしれない思った今日この頃。

刷込

台所で自分の分の食材を見ていた時、『なんか食べるの?』と妻が尋ねた。僕は、インスタントラーメンが入った戸棚を開けながら、何気なく『なんだか晩メシ食ったらハラすいちゃってね』と答えてみた。妻は、一瞬間をおいた後、『サラッというから当たり前かと思っちゃうじゃない』と言って呆れた顔をした。

中途半端に食べてしまうと、却って食欲が増すというのはまだ理解されないようだ。

続報

『もう呆れるしかないわ。常識じゃ考えられないよねぇ』

苦情の電話で返却の確認をした後、どれだけ待ってもネガフィルムが帰ってこないことに業を煮やした妻は、後日再度電話し『担当者ではなく責任者を』と迫った。責任者に再度確認をとってみると、妻の苦情は前回の電話の後、”既に対応済”の扱いになっていたそうで、急いで発送処理をする旨、前回以上の勢いで丁寧に謝罪されたのだそうだ。

そのまた一週間後、届いたフィルムに添付されていた書類を見て妻は驚愕した。添付の書類の日付は一年半前のままで、一年前のコンテストの告知が何の修正もされずに記載してあったのだそうだ。当然、謝罪の言葉など、どこにも見当たらなかった。

それを、『もう、何だか面白い』と言い、その書類を記念にとっておくという妻はつくづく優しい人だなぁと思う。