成長

息子のトイレトレーニングは、娘のそれに対して比較的早く始めた。妻によると、早い段階からパンツに一度お漏らしさせて不快感を体験させるということらしい。それによりトイレに行きたいと思わせるのが狙いだとか。

先日、妻が娘と買い物にいくというので、息子と二人で留守番することになった。その日もパンツで過ごしていた彼は、僕がテレビを見ている傍でブロックで遊んでいる様子だったが、ふと気がつくといつの間にかいなくなっていた。

気になって家の中を探そうと立ち上がり振り返ると、すりガラス仕様のドアに、向こう側から顔を押し当てている彼の姿が見えた。彼は泣いていた。ママが帰宅するまで我慢できなかったことに対してなのか、パパに言う勇気がなかった自分に対してなのか理由は定かではないが、パンツをはみ出してズボンの内側からこぼれ出てしまったウンチを踏みしめながら泣いているその姿から、それが悔し涙に違いないことは即座に理解できた。

彼は、僕が後片付けや掃除、非常用に用意されたオムツへの交換を行っている間中、二次被害を最小限にしようとしてくれたのか、じっとしながら微動だにせず、泣くのを堪えていた。その表情を見た時、トイレトレーニング云々以前に、我が息子が精神的に強くなっていく姿をみたような気がして、とても嬉しく感じたのだった。

というようなことを、いくら説明しても、『どうしてノホホンとテレビなんか見てんの!』『ずっと見れくれていればこんなふうにならなかったのに!』と言って妻は僕を叱責した。

『一度お漏らしさせて…』というのは、どうやらオシッコのことを想定していたようだ。